瑠璃ガール<28>

瑞月
※本館「現代編」設定の2人です※





このまま何も気付かない振りして「高彬ー」なんて言いながら駆け寄るか、それともどこかに身を隠してやり過ごすか。

考えること数秒。

あたしは、近くの大きな銀杏の木に近づいた。

太い幹が隠れるのには好都合だった。

実はね、高彬の告白場面に立ち合ったのって初めてじゃないのよ。

ううん、それどころかかなりの回数に上る。

だって、高彬ってほんとにモテるんだもん。

代田くんみたいにキャーキャー騒がれるモテ方じゃないけど、その分、本気で片思いされてるって感じのモテ方。

でも、告白した子はいつも玉砕してて、どうしてそれをあたしが知ってるかって言うと、高彬が話してくれるから。

あたしも興味ない振りで茶々を入れながら、しっかりダンボの耳になったりしてる。

それでその度に安堵のため息を吐いたりして・・・

銀杏の木に寄りかかって空を見上げると、まん丸には少し足りない月が浮かんでいた。

秋のせいか月が綺麗に見えてて、一週間後の「観月祭」には見事な満月が見られそうだった。

高校最後の学園祭。

後夜祭、高彬は誰と過ごすんだろ・・。

観月祭には後夜祭があって、実はそっちの方が盛り上がったりするのだ。

夜のグラウンドでキャンプファイヤーやって月を見て、キャンプファイヤーの火が消えると代わりにイルミネーションが灯って、最後に秋の夜空に花火が打ちあがって───

いつもそれをきっかけに誕生するカップルも多数で、何となくこの時期、男子も女子もソワソワしている。

だから後夜祭を誰と過ごすかは、皆の共通の関心事項で───

向こうから足音が近づいてきて、あたしは更に銀杏の木を回り込んだ。

どんどん近づいて来て、反対側からそっと様子を窺ったあたしは

(あ)

と声を上げそうになってしまった。

学園一の才色兼備、美少女の誉れ高い、3組の女の子だったからである。

直接話したことはないけど超有名人で、半端なく告白されまくってるらしく、でも皆、当たって砕け散っていると言う専らの噂だった。

うわぁ・・、そんな子が高彬のこと好きになっちゃったんだ・・・。

どうしよう・・

「あ、瑠璃さん、遅いと思ったらこんなとこにいた」

「きゃっ」

木の陰で一人であわあわしていたら、ふいに後ろから高彬の声がして、思わず飛び上ってしまった。

「教室まで見に行こうかと思ってたんだ」

「あ、ごめん。えーとさ、何かお取組み中だったみたいだからさ。終わるまで隠れてようかなぁ、なんて思って。へへ」

こう言えば

『何だよ、見てたのかよ、瑠璃さん。人が悪いな』

『まぁ、たまたまよ。相変わらず、モテて結構なことじゃない』

『止めてくれよ、結構だなんて。毎回、断る言葉に苦労してるんだから』

なーんて会話になるので、今回もそう言って見たのに、高彬はふいに口をつぐんでしまった。

あたしから目を逸らし、そうして

「帰ろうか」

校門に向かって歩き出す。

え。

えぇ?

もしかして、話、逸らされた?

どうして?

まさか、まさか。

そのまさかなの────?!








<続>


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